300字小説
父と子の物語
マスターが電子ブックに今回の航海の探査記録を書き込み、私からDLしたデータも記録する。
「この記録は俺とお前、二人の物語だな」
「アシスタントアンドロイドの私に主観的な見解はありませんが?」
「それでも、俺の目とお前のカメラアイでは映るものが異なる。これは、お前の物語でもあるんだ」
何十回と重ねた未知の宙域の探査航海の末、マスターは私に船と財産と記録、全てを残して亡くなった。
私は今、マスターが探査し切れなかった宙域を前にしている。
船のコックピットで電子ブックを開き、まず綴る。
これから先、記録するのはマスターの物語の続きであり、彼から『息子』として全てを受け継いだ私の目を通した、もう一つの物語でもある。
お題「もう一つの物語」
10/29/2023, 12:28:05 PM