—透明人間—
ある日突然、死んだわけでもないのに、僕の存在が世界から消されてしまった。
それから一週間経って分かった事は、僕は『月明かりが照らす夜にしか見つけてもらえない』体質になってしまったという事だ。
まるで透明人間。いや、本当に透明人間になってしまったのだ。
そうなってから、僕は近くで皆の事を見ていた。
「いつか帰ってくるんじゃねぇか。まぁどっちでもいい」と父親。
「帰ってくるなら帰ってくればいいし、帰ってこないなら知らないわよ」と母親。
昔から両親とは仲が良くなかった。むしろ僕がいなくなって良かったと思っているようだった。
僕には友達がほとんどいないので、学校の中の様子もあまり変わらなかった。
だから僕は月が照らす夜も、皆に見つからない場所に隠れている。家の近くにある森を拠点にして生活していた。
「たつき君ー、どこかいますかー」
たった一人、僕を探してくれる人がいる。
「あれ、ここら辺で目撃情報があったんだけどな」
月明かりに照らされた彼女を、見つからないように遠くから見ていた。
僕の生き方はもう決めた。
たった一人の友達を、影から支えようと。
お題:君を照らす月
11/17/2025, 4:52:35 AM