始まりと言うのは春か年始にあるもんだと思っていた。
少なくともこんな秋じゃない。
もっと爽やかで。
もっと新鮮で。
少なくとも、今、目の前で大粒の涙を流しているこの子を前にして高鳴るこの胸のドキドキは、恋なんかじゃない。
いつもムカつくこいつの涙を見てドキドキするほど俺は単純じゃない。
そんなどっかのラノベみたいなシチュエーションで恋に落ちてなるものか。
この胸の高鳴りは、そう、俺のせいで泣いていると思われたらどうしよう、のドキドキのはずで。
潤んで、今にも涙とともに溶けそうな瞳が俺を見上げる。
光が水に混ざって。
溢れて。
零れて。
落ちると思ったら受け止めなきゃって、咄嗟に抱きしめていた。
……………………あぁ〜、俺、この後どうしたらいいんだろ。
季節だって、場所だって問わず、始まりに共通してる事が一つだけある。
始まりはいつも、突然で、予想外だ。
お題/始まりはいつも
10/21/2022, 8:16:04 AM