『風のいたずら』
冬特有のひんやりとした風が吹いて、隣を歩く君が小さなくしゃみをする。
そういえば雪降るって言ってたっけ、と脳内で今朝見たニュースを再生しながら声をかけた。
「マフラー、いる?」
セーラー服の襟から覗く首は夜空の浮かび上がるほど白くて、少し驚いた。
「え、いいの?」
「うん。風邪引いたら困るでしょ?俺は寒くないし」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
自分の首に巻き付けてあったマフラーを君に渡そうとして、その手が荷物で塞がっていることに気づく。
「俺が巻こうか?」
「お願いします」
はい、と心なしか首を伸ばして君が視線を寄越す。
微かに心臓が鼓動を早めた気がした。
寒さなのか緊張なのか、僅かに震える手で何躊躇いもなく晒された首にマフラーを巻く。
「ありがとう」
身長差のせいで上目遣いになった君が微笑む。
今度こそ正真正銘胸が高鳴って、きっとずっと抱えていたはずの思いを自覚させられた。
1/17/2025, 10:14:39 AM