太田エイ

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雨になると彼女を思い出す。
彼女は雨が大好きで、一緒に暮らしていた頃、雨が降ると僕の都合なんかお構いなしで無理やり起こされ、外に連れ出された。
眠いのに、しかも雨の中。
面倒くさいなあなんて思いながらも引っ張られ、近所の公園に連れて行かれた。
都会ではあるがそこそこ大きな公園で、木の散歩道がある。見上げるような高さの木が両側から枝を張り巡らせて、暗くもないが不思議な明るさの場所があるのだ。
そこにつくと彼女は傘をたたみ、くるくる回りながら決まってこういうのだ。
「ほら、雨が降っているのに濡れないよ」
雨の雫は枝葉から幹に流れ落ちていく。
彼女はそれが好きらしく楽しそうで、そして僕もそんな彼女を見るのが好きだった。

あの散歩道に、今はもう行っていない。

4/21/2026, 10:39:32 AM