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誇らしさ…

恋愛結婚が許されず、娘の結婚相手が許されず、最初に産んだ我が子を結婚を反対された父に取り上げられてしまった。

父は、昔気質の頑固者…母が口出し出来るはずもなく娘から取り上げた初孫を母が親代わりに育てることになってしまった。

その娘は、自分の母の妹一家と暮らすことになり、祖母からは厳しく育てられ、おじさんおばさんの子供達の面倒を全てみて、家事全般から常識的な事、人の付き合い方、お客さんへの対応など、みっちり祖母に仕込まれた。

祖父、祖母はその辺りでは誰に対しても、かなりの面倒見のいい二人と有名だったらしく、あの二人に育てられた娘!と随分と評判になったそうだ。

しっかりしていて美人で芯も気も強く、出来ないことは出来ないときっぱりと言う反面、困っている人にはとことん優しいと、何処にお遣いを頼んでも恥ずかしくない娘に育っていった。

祖母のお陰で普通の人には解らない事や、子供の頃から大人の話し相手やお茶菓子を用意したり、赤ちゃんの面倒もよく見て手先も器用で、自分が知らない事はどんな人にも聞いて教えて貰ったと言う。

やがて縁談がきて、娘は結婚した。

結婚相手は特殊な仕事をしている人で、転勤が多く新婚の頃から定年まで、あちこちと数年おきに移動した…勿論、その間に二人の娘を授かり、育て両方共結婚している。

定年を迎え暫く別の仕事をし終えて、二人だけの老後生活を数年過ごした後、三年前に主人を突然失う。

さっきまで話をしていて、歩いて、病院まで一緒に付き添ったのにあっという間に崩れ落ちる姿を見たのが最期の瞬間だった。

数奇な運命で産まれ、育ち、青春を過ごし結婚相手と共に生活し、育児を経て老後を迎えて…今は暮らしていた空間に独り暮らし。

既に高齢な体に、あちこちガタがきて、歩くのが困難になったり、顔面に皮膚癌が見つかり手術したり、主人の一周忌、三回忌、次は七回忌ね…と日々の生活を、きちんとこなして暮らしている。

…私の母だ。

誰がなんと言おうと、誇らしさを全身で光らせている…私の母の生き方は、凄い。

今まで一度も自分の生き様の怨み辛みを聞いたことがない。

最近、つらつら…と聞かせてくれる昔の話を誇らしく頷いて聞いていることは、母は知らないけどね…
まだ、もう少し 聞かせてね…



*読んで下さり ありがとうございます*



8/16/2023, 10:43:00 AM