酸素不足

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『海へ』


美しいと思った。
濡れた艶やかな髪も、磁器のように真っ白な肌も、とても美しかった。
僕を捉えた瞳は、今まで見た青色の中で最も綺麗な色だった。

やっと見つけた、僕の宝物。
彼女を探し始めて、たったの十五年で見つけられたのは幸運だ。

にっこりと微笑む彼女に引き寄せられるように、私はゆっくりと歩みを進めた。
服が濡れることも厭わず、ザブザブと水の中を進むと、彼女もまた、私の方へ近づいて来てくれた。

美しい腕を伸ばして、彼女は私を迎え入れる。
そっと触れた彼女の指先は、氷のように冷たかった。

「会いたかった」

私の言葉に、彼女は満足そうに笑うと、力強く私を抱き締めた。
そして、そのまま私を海の底へと連れて行ってくれたのだった。


「みんなー、人間(エサ)が捕れたよ!」

8/23/2024, 1:15:27 PM