ある日の午後のこと。薬草魔術師のシロズミは、ポットに沸いたお湯を、とぷとぷと茶葉に注いでいく。辺りにみずみずしい花の香りが広がった。
『メレの花茶か?』
ハンモックで寝ていた、シロズミの使い魔タンが、意思疎通魔法で話しかけてくる。
「そうだよ。タンも飲むかい?」
『ああ。』
「そう言うと思って、多めに淹れたよ。」
茶葉を蒸らしている間に、カメレオンサイズのタンをハンモックから下ろし、テーブルの上に、シロズミ用のカップとタン用のお皿を並べる。
「今日はクッキーにしようかな。」
棚を開けて缶を取り出し、綺麗に詰められたクッキーを3枚取り出した。
「タンは?ペレット食べる?」
『いや、いい。』
ペレットの匂いは、メレの花の香りには似合わない。テーブルの上の用意が済むと、シロズミは、ゆっくりと花茶をカップとお皿に注いでいく。茶葉は濾されるのだが、メレの花茶は温度が下がると、溶けていた花びらが、再び現れるのだ。カップとお皿には、お茶と、そこに浮かぶ白い花びら。
「いただきます。」
『いただきます。』
口に含むと、花の良い香り。花びらは、ほんのりと甘い。まるで砂糖菓子だ。
『うむ。美味い。』
タンのお茶は、浅い皿に注がれているので、冷めるのが早く、もはや、花びらでお茶が隠れている。だが、これも一興。タンは美味しく花びらを食べる。
「タン。顔に付いてるよ。」
シロズミは、笑いながら、タンの鼻先に付いた花びらを取って、口にする。
『ああ、すまん。』
「美味しいね。」
『うむ。』
こうして、二人のティータイムは過ぎていく。
3/17/2025, 7:55:02 AM