祖母の家は新幹線と電車を3回乗り継いで、終点の駅から出ているバスに乗って2時間ほどのところにある。
今年の夏、久しぶりに両親と祖母の家に帰省することになった。
祖父が亡くなってから一人で暮らしている。今までちょこちょこ遊びに行ってはいたが、こんなに長期で遊びに行くのは初めてのことだった。
家に着くと祖母がハキハキとした声で迎え入れてくれた。
祖母はこの歳になっても腰が曲がらずセカセカと動き回るようなパワフルな人だ。
「みんなよく来たね、疲れただろ。麦茶冷やしてあるから早く上がり。」
そういうと私たちを居間へ連れやって座らせるとササッと麦茶を出して、私たちの荷物を部屋に持って行ってくれる。
母が気にして立とうとしても笑いながら
「いーのいーの!座って座って!年寄りは暇で暇でこれくらい動いとかないと途端に腐っちまうよ!」
なんて言いながらまたセカセカと荷物を運んで言ってしまった。
荷物も片付け終わって、私たちからのお土産を受け取ると祖母はやっと一息ついて両親とお茶をしながら話をしだす。
私は大人たちの会話にイマイチついていけず、ソロソロと縁側の方に逃げた。
縁側は祖母の家の中で特に気に入っている場所だ、夏なのに入ってくる風が涼しくて気持ちがいい。おまけに風鈴もかかっていて風に合わせてチリンと鳴っている。ちなみにこの風鈴は私が小学生の時の修学旅行中に行った『風鈴絵付体験コーナー』で作った風鈴だ。上手くできたので祖母にプレゼントしたら喜んですぐに縁側の軒下にぶら下げてくれたのを覚えている。
私は祖母とこの家が好きだ。
古い家だがいつ来ても隅々まで掃除が行き届いており、よく換気をしているのか部屋の空気も澄んでいる感じがする。これは祖母がこまめに掃除をしているからに違いない、もしかしたら私たちが来るからと頑張ってくれたのかもしれないけど。
庭はマンション住みの私からは考えられないほど広く、庭をふたつに分けるように真ん中から公道に続く道が伸びている。分けられた庭のうち半分は畑になっている。今植えられているのはナスやきゅうりやトマトの夏野菜、それから向日葵が咲いている。この畑は祖母の趣味らしい。植物の世話をしたり雑草を抜いたりして元気を保っているんだと前に話してくれた。
畑と反対の庭は駐車場として使われていて、目につく特徴と言えば金木犀の木が植えられているのと、井戸がある位だ。井戸にはくみ上げの手押しポンプがついていて、小さい頃はそれがとても気になってよく持ち手を上げ下げして遊んでいた。今考えると水がもったいないだろうに、祖母は笑って見守ってくれていた。やりたいことはまずやらせてみる、が信条らしい。
-あとで書く-
8/17/2025, 5:10:40 PM