白糸馨月

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お題『相合傘』

「傘、入る?」

 って聞かれたので、頷いてそのまま入ってしまった。学校から帰る時、激しい雨が降っていたので下駄箱前のひさしのところでやり過ごそうとしたら、たまたま好きな子と目があってしまった。
 彼女は、折りたたんでいた花柄の傘を開いたところだった。
 それで今、俺のとなりには憧れの女の子がいる。
 なにを話そうか迷った時、ふいに彼女が口を開いた。

「天気予報はずれたねー」
「あ、あぁ」

 本当は天気予報なんて見てないのに、彼女に『ニュースを見ないやつ』だと思われたくなくて話を合わせる。
 俺を見上げてくる好きな子はすごく可愛い。会話がはずまなくてもとなりにいるだけで目の保養だ。だから、じっと見てしまうことで嫌われるのを避けたい。

「あ、あのさ」
「なに?」
「どのへん住んでんの?」
「えっと、●●かな。一本乗り換えたとこ」
「あ、そうか」
「山田くんは、学校から近いんだっけ。いいなぁ」

 そう、高校は家から一番近いところを受けて選んだ。なのに彼女はすこし遠くて、帰りが別れることにすこし落ち込む。
 けど、となりにいるだけで幸せな気分なので俺はあれからも必死に会話を続けた。べつに話ははずまなかったけど、彼女が笑ってくれたからよしとする。

6/20/2024, 4:10:02 AM