まるくに

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今日は雨が降るらしい。そんなことを思いながら外に出た。数十メートル歩いて、傘を持っていないことに気づいた。まだ雨も降っていないし、遠くまで行かないし、いいか。傘を取りに行くのを諦めた。

帰り道、案の定降る雨を、かろうじて見つけた軒先の小さな屋根の下でしのいでいた。自分はいつもこうだ。そうやって責めていると、主様、と聞き慣れた声が雨音に紛れてした気がした。下を向いていた顔を上げると、手に閉じた傘を持って、なぜかずぶ濡れになっている執事の姿があった。
お迎えにあがりました。雨も降っていましたので。そう言う執事の濡れた服を慌てて引っ張って、屋根の下に入れる。びちょぬれじゃないかと伝えると、雨が降っていましたので、いても立ってもいられず傘もささずに走ってきてしまいました。と目を細めて微笑まれた。息も上がっていないのに、よく言う。この人はきっと、必死になって主に尽くす自分を評価されたいのだろうと思った。せっかく迎えに来てくれたのに、酷いことを考えてしまう。また俯いた。
下を見続ける主をみて、執事は心配しているようだった。どうされたのですか?お体が冷えてしまわれましたか?早く屋敷に戻りましょう。パッという音と、ボツボツという傘に雨が当たる音が聞こえた。どうぞこちらへ。と執事は肩に手を置き自分の方へ引き寄せた。雨に濡れてひんやりしている執事は冷たい。距離を取ろうとすると、離れた距離分寄ってきた。
雨が傘に当たる音と、執事の息の音が聞こえる。下を向いて執事に身を寄せて(寄せられて)ぎこちなく歩きながら顔が赤くなっているのがわかった。それに、体もだんだん暑くなってきた。だって、彼と傘の下で2人きりなんだよ。ひんやりしていた執事の服は、主の熱で温かくなっていた。

相合傘について

6/20/2023, 4:17:54 AM