SAKU

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窓越しに見える景色は、昼間だというのに暗い。雨粒が激しくガラスを打ち付ける様子は、穏やかで明るい室内のせいで嘘のようだ。
音自体もくぐもって響いてくる。通気性を犠牲にしているおかげでかなり静かだ。換気はしないとなぁと縁側へと目を向ける。雨粒が入ってこないひさしを長く伸ばしたそこは、風に煽られた木の葉や枝などが柱に引っかかっている。
これ以上激しくなるようなら雨戸も閉めないといけない。二階を先に閉めるかと腰を上げると視界の端に映ったものに動作を止める。
浴室へと向かい、大判の手拭いをありったけ抱える。客間へ戻る前に扉が開く音が耳に届いた。
普段は音が立つのを怖がるように極力優しく開かれる扉は、風の抵抗のせいで大きく鼓膜をうつ。
雨ざらしになった外套は、水を多分に含んで重そうだ。部屋を水浸しにすることを気にしてだろう、玄関から動かない様子に上掛けを受け取って洗濯物の山へと放る。どうせ着て帰れやしないのだから。
抱えた手拭いを渡すと握りしめて腕から拭い始めたので、頭からこぼれた水分が全てを無意味にしている。
自身の手に持った手拭いを頭から被せて乱暴に水を拭う。来客らされるがままになり、持っていた手拭いさえ手放してしまった。
何でこんな天気の日に、と思わず口をついて出る。来訪を喜ぶ気持ちはもちろんあるけれど、危ないじゃないかと心配する気持ちが曲がって怒った口調になってしまった。
こんな天気だから会いたくなったと答える相手。
そんなの自分もだと答える代わりに、手拭いを押し付ける力を強くする。

7/30/2024, 10:06:59 AM