蓼 つづみ

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私の欲望は、
焦げる匂いのする炎ではなく、
静かに喉を焼く乾きだ。

胸の奥に、ふたつの色がある。

ひとつは冷たく澄んだ青。警戒と理性の色。
触れようとする手をやんわりと押し返し、
世界との距離をやさしく測る。
この色は、私を守る静かな結界だ。

もうひとつは、淡く朱を帯びた色。
ほんのりと温かく、柔らかい匂いを立てながら、
誰かの体温を求めて漂う。
光を吸い込みながら、少しずつ膨らんでいく。

二つの色は互いを溶かすことなく、
わずかな隙間で揺れている。
その狭間には風が生まれ、
世界と自分の境界を、
やさしく撫でるように確かめている。

私の中にある“距離”も“寂しさ”も、
矛盾じゃない。
それは二色が共に在る証。
守りながら、求めている証。

静と温、理性と情。
まるで呼吸の表と裏のように、
互いを消さずに在り続けている。

触れられたくないのではなく、正しく触れられたくて、
分かちあう温度を夢見ている。それは確かな均衡だ。

何も奪いたくなんかない。
それでも、温度を分け合いたい。
ただ、自分の中身をちゃんと読まれたいんだ。

欲望は、満ちている者が伸ばす手だ。
飢えは、足りていない者の内部から鳴ってしまう音。

「なくても平気」と言い聞かせても、
ふとした瞬間に喉の奥がひりつく。
誰かの不用意な言葉で、
急に空洞が露わになる。

温度を分け合えないままでは、
私の呼吸は青に傾いていく。

題 欲望

3/1/2026, 1:32:00 PM