秋雨ノ源

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ところにより雨

※こちらはフィクションです。

おかしいな……
今日は一日晴れだったよな?

自宅から出る時に嫁の声を聞き
電車に揺られ、駅を出て
会社で仕事をしてたはずだ

なんで顔が濡れているんだ?
なぁ?どうしてだと思う?
早苗……

営業中に会社から電話があって
「おい!宮田!奥さんが車に轢かれたって!
急いで○○病院へ向かえ!」
俺は営業で使う資料を放り投げて
タクシーを捕まえて病院へ向かった。

「み、宮田 早苗という女性が運ばれてきたと思うのですが病室は何処ですか!」
病院であるのに叫びながら受付の女性に聞いた
教えてもらった病室に着いた時には
身体中ホースだらけの嫁……早苗の姿があった。

脈が浅く、もう長くないと後ろから先生に言われた

「なぁ、早苗……今日晴れなのに
俺の顔が水でべちゃべちゃだよ」
早苗の手を握りながら俺は聞いた

「今日は……"ところにより雨"って……天気予報で言ってたから……傘渡すの忘れてたわね」
苦しそうな顔をしながら早苗が答える

「まだ天気が良いわね……、またもう少しお出かけしてくるわ」
「何処に行くか聞いても良いか?」

「少し……、遠いところよ」

「そっか…暫くしたら俺も着いていくよ」

「直ぐはダメよ?…アナタにはやるべき事を終わらせてから来るのよ?」

「ははっ、分かってるよ」

「じゃあ、いってきます…」

心電図から警告音が激しい音とともに鳴り響く
俺の顔はくしゃくしゃになりながら
目から零れ落ちる雫がぽたぽたと落ちる

「早苗こそ、さっき話してたのに傘忘れてないだろうな
次会うときに、傘渡さないとな」

病室から出された俺は、晴れた空を滲んだ瞳で仰いだ

「雨、止まないな…」

3/24/2024, 10:54:21 AM