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『ないものねだり』



映画デートの待ち合わせ。
約束の時間の10分前。

ショッピングモール内の映画館入口の隅に立つ雪村さんを見つけた。
雪村さんをチラチラと見る人達が少なくない。
惚れた欲目じゃなくても、雪村さん、美人だから!
あわてて小走りで向かう。

「雪村さん!」

雪村さんがスマホから顔をあげて、少し笑ってコッチを見る。

こっちに笑顔を向けた時に、少し首を傾げたから、色素の薄いサラサラヘアが動いて、真逆の少しクセ強で真っ黒な自分の髪の毛とのギャップを強く感じた。
そう思ってたんだけど。

「あーやっぱり夏目の髪の毛うらやましいな、、、。
クセがパーマみたいでいいな、、、」

そう言いながら、雪村さんが僕の髪の毛に手を伸ばしてきて、一筋髪の毛を指にクルクルっと巻いた。

「雪村さんっ、、、!!」

3/27/2024, 9:53:23 AM