「終わりにしよう」
少年はそう呟いた。右手に握られている剣はしっかりと少女の首元を捉えている。
「私を殺したところで何も変わらない」
「……それでも、僕は君を止める」
「…………そう」
東京だった筈のこの場所は今、ビルが崩れ炎が燃え盛り、川や線路にヒトだったモノの死骸が転がっている。
「私はただの捨て駒。この地球と共に滅ぶ為だけに生まれてきた存在。私が死ぬ時はこの世界が無くなる時」
「それでも、僕らの街を……この日本を、壊したのは君だ。同胞達を置いて生き残ってしまったのも僕だけだ。僕は君を終わらせる義務がある」
「もうこの世界が滅ぶのも時間の問題。抵抗なんてしない」
「……悲しくないのか?」
「…………かなしい?」
「使い捨てられて、悲しくないのか?悔しくないのか?」
「……私はこの為だけに生まれてきた。だから分からない」
「…………君にも見てもらいたかったよ。この世界の素晴らしさを」
「どうせいつか消える世界なのに?」
「……それでも、僕らの街を紹介したかった。何も知らない君に知ってほしかった」
「…………そんな感情は分からない」
「……ぐだぐだ喋ってごめんね」
少年が右手に力を入れる。少年の頬を伝う液体が何なのか少女が問いかける前に世界は美しく塵となった。
『終わりにしよう』
7/15/2024, 10:32:14 AM