maria

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僕は朝早く教室に行く
君が大抵 早くきてるから。

いつものように教室のドアを開け
君がいることには気づいても
わざと焦点を合わせないように
何気ない口調で 
「おはよう」と言う。
うん。不自然じゃなかったよな。

「おー、おはよー。
 今日、英語あったっけ。
 おまえ予習とか やってきた?」

「かるーくかなー。」

僕は努力して普通の笑顔を作る。

思わせぶりな言葉とか
何かを予感させるような眼差しなんて
一切 僕は出さないけれど
このむねを開いたとしたら
きっと君でいっぱいになっている。

だってこんなに息ができない
同じ空間にいるだけで。


「なあ、田中、
 急に世界に終わりが来たら
 お前どうするよ?」

君が僕の席の前の椅子に
こっちを向いて腰掛けながら訊く。

「え?突然、なに?
 今日の英語に関係ある?」

「あのさ。関係ないけど、
 お前見てたらさ」

君が僕をじっと見ながら

声を低くして ゆっくり言う。


「世界の終わりになって、

 ようやく言えるってことは

 今でも覚悟決めれば

 言えるってことじゃね?」


君は今日に限って 

僕から目を離してくれない

さっきまで 普通の話をしてたのに。

ずるいよ 急にまじめな顔で。


そんな君から僕も

視線をはずせなくて

君の眼を見つめながら  


ぼくは 息を吸って


        口を開いた



     「世界の終わりに君と」

6/7/2023, 3:55:23 PM