鏡の森 short stories

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#016 『何度目かの夏前に』

 連休前の午後ともなれば気分が上がるのはよくあることで、そんな時は妄想も様々に弾む。
 夕飯にはホロホロに煮込んだ鶏肉のスープがあるから、他は簡単にサラダとパスタで。家事は明日に回しちゃって、手軽に使えるショルダーバッグの生地を選ぶんだ。
 作りは簡単。外側のメインにはお気に入りのデザイナーさんの生地を大胆に使って。ハギレをつないで、少し斜めに接ぎ合わせるのもアリかも。中厚のシーチング地だから、キルト綿を貼って少しだけキルトも入れよう。レインボーのラメ糸を使うのもいいな。
 口は閉じててほしいけど、ショルダーにするんだからファスナーやマグネットより、口折れタイプに仕上げようかな。それならマチはなしでループをはさんで、ショルダー紐は……後から色の合う合皮か、夏らしくクリアタイプを買って合わせよう。
 サイズはA4の書類が縦に入るくらい、仕立てはミシンだからそんなに時間はかからない。取りかかりさえすれば四、五時間でなんとかなるんじゃない? 今夜のところは、そう、裁断と綿貼りくらいまでを終えて。
 現実には? お腹がふくれたら満足しちゃって眠くなって、ぼんやりテレビかスマホを見ちゃって、あぁ、もうこんな時間、ってなって。
 お休みに取りかかった方が一気に仕上げちゃえるよね、なんて思い直してみたりして。
 積読ならぬ積布の山を視界の端に収めながら、妄想デザインを何度となく繰り返して。
 あと何回夏を迎えたら完成するんだろうね?

お題/おうち時間でやりたいこと
2023.05.14 こどー

5/14/2023, 2:52:38 PM