《空白》
「あれ?ここなんだろ」
高校時代に仲が良かった3人で集まって卒アルを見ていた。
すると、行事の時の写真に決まって自分の横に空白が空いていた。
まるで、もう一人いたようなそんな空白だった。
そこに今まで気が付かなかった違和感と確かにもう一人そこにいた、と断言出来る自分の感覚に少し気味が悪くなった。
それは二人も一緒のようで、三人で幻の四人目を探すことにした。
高校時代の写真をひっくり返してみても、三人で出かけた時には必ず四人目の空白があり、三人のグループメールを見てみても、会話と会話の中に違和感があった。
だから、自分たちの横には誰かがいたのだということになった。
「探そう」
誰からともなくそう言った。
その四人目は、寂しがり屋だったと思ったから。
四人目の証拠を探す内に、携帯の中に一つのメールを見つけた。
不思議と四人目の手紙だと確信した。
『
拝啓 俺を忘れたあなたがたへ
このメールを目にしたということは、あなたがたは俺 を忘れて、また、思い出そうとしてくれているのでしょう。
俺を思い出そうとしてくれてありがとうございます。
本当に嬉しく思います。
しかし、もう思い出そうとしないでください。
それ以上探そうとしてしまったら、またあなたがたの内の誰かが忘れられてしまうかもしれません。
俺はそれだけは絶対に嫌です。
どうか、しあわせになってください。
あなたがたを誰よりも愛する俺より
』
そのメールを読んだ時、なぜだか涙が止まらなくなった。
「かっこつけるなばか」
「そんなキャラじゃないでしょきみ」
不思議とそんな言葉が口から零れた。
それから、四人目を思い出そうとはしなくなった。
その代わりに、三人で遊ぶ時は四人目の分も用意するようになった。
居酒屋では四人席に座り、四人目の分も注文する。
1番最初にビールを置いたら何故か文句を言われた気がして、次から日本酒を置くようになった。
家で遊ぶ時はきちんとクッションと飲むものを4人分用意する。
四人目の分は飲み物はコーラでクッションは橙色だと自然と決まっていた。
その交流は老後まで続いた。
老いていくにつれて、チラチラと何やら楽しそうに笑う若い男が見えるようになって。
声をかけたら消えてしまいそうだから誰も知らないフリをして。
いつまでも、楽しかった。
後悔なんて無い人生だった。
だがもし、ひとつ心残りがあるとすれば、葬式で痛々しく微笑んでいる彼を抱きしめられなかったことだ。
俺を忘れた皆へ、いつまでも仲間に入れてくれてありがとう。
来世まではついていけないけれど、しあわせになってね
9/13/2025, 11:05:35 PM