小説
迅嵐
「嵐山ー…って、あれ?」
資料を片手に眠りこけている嵐山を見て、おれは声のボリュームを落とす。真面目な嵐山からすると、とても珍しい光景だ。
顔を覗き込むと、すぅすぅと小さな寝息が聞こえてくる。長いまつ毛が目元に影を作っていた。形のいい唇が目に飛び込んできて、おれは心の中で呟く。
たまには良いよね。
そして顔を近づけると、そっと嵐山の唇を奪う。
柔らかなそれは少し甘くて、離れ際には寂しくなって舌でペロリと舐めた。
「……何やってんだろ、おれ」
段々と恥ずかしくなってきたおれは、また来ようと決意し身を翻す。
後ろで嵐山が顔を赤く染め、資料をくしゃりと握りしめていた事をおれは知る由もなかった。
1/14/2025, 12:49:50 PM