美佐野

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(二次創作)(正直)

「まず起きたのがお昼前だったでしょー。シオンいなかったから冷蔵庫にあったものを適当に食べてー、腹ごなしの散歩してたらバァンさんが露店開いてたから冷やかしてー、ちょうど通りがかったルミナちゃんからお茶に誘われたからお屋敷行ってー、次はケセランさんのところで遊んで、お腹空いたからいったん帰って来たところだよ」
「ダウト」
 シオンはロックの陳述を一刀両断した。
「ダウトって、別にボク嘘言ってないけど」
 ロックはあどけなく首を傾げている。シオンはそれをスルーして、事件の本質を突くことにした。
「僕は、君が、パウンドケーキを食べたんだと睨んでいる。正直に、白状しろ」
 それは昨日の出来事。不甲斐ない息子を貰ってくれてありがとうと、直々にテイとルウ夫妻が牧場を訪ねてきた。当然ロックはその時間帯は家で寝ていたわけで、仕事の手を止めて応対したのはシオンである。お礼に、とルウが差し出したのは、彼女お手製のパウンドケーキだ。妙にオレンジがかっていると思えば、何とカボチャをふんだんに使っているらしい。わすれ谷ではなかなか手に入らない野菜の名前に、俄然嬉しくなったシオンは、間違ってもロックに食べられないようにとそれを冷蔵庫に仕舞ってから、仕事を再開した。
 思いのほか仕事が忙しく、お昼ご飯がやや後ろにずれこんだシオンは、それでもわくわくした気持ちで冷蔵庫を開けた。そうしたら、まあ見事に、パウンドケーキだけ無くなっている!
「だってシオンのだって思わないじゃん」
 ロックは口を尖らせている。
「ちょうど美味しそうな料理があったら、そりゃ食べるよね。大体ケーキだなんて判らなかったし」
 微塵も反省の色はない。確かに名前を書いていなかったが、ここはシオンの家なのだ。なんじょう自宅の冷蔵庫の中身にいちいち記名するものか。とはいえ、ロックを責めても結果は変わらず、今はただ幻となったパウンドケーキの味を夢想するだけであった。

6/4/2024, 5:27:25 AM