ね。

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迷い込んだ森の奥には、小さな湖があった。その湖面は、月明かりに照らされ、きらきらと輝いていた。



ボクは、側にあった切り株に腰を下ろし、ポケットからビスケットを1枚取り出した。2日間何も食べていなかった。
ひと口かじると。いつも通りバターたっぷりの味がした。
甘党のボクに合わせて作ってくれる姉のビスケットは、ボクの大好物だった。
楽しそうにビスケットを焼く姉の姿を思い出し、涙がこぼれた。





姉は、2日前に突然いなくなってしまったのだった。
彼女がよく通う店や、知人の家や、思い当たる所、すべてを探したけれど、どこにも姉の姿はなかった。
姉の行く先を知るものも、誰もいなかった。



もう何もかも投げ出してしまいたくなって、ボクは乱暴に道を歩き続けた。
もうボロボロだった。
どうしていいか、わからなかった。




下を向くと、足元に散らばった、ビスケットのかけらを求めて、小さなリスが寄ってきていた。
ボクは残りのビスケットをそっと足元に置いた。リスはそれを抱えると、1度だけこちらを見て、森の中へと消えてしまった。






しばらくすると、湖の方から、こぽこぽ、と音がしてきた。
風もないのに湖が波打ちはじめた。
湖面の輝きがどんどん増していき、眩しくなってボクは思わず目を瞑った。


今度は、ざぼん、と水の動くような音がした。
びっくりして目を開けると、湖の中央から、噴水のように光たちが溢れ出していくのがみえた。
その細かな光たちは、天高く舞いあがり、しゃらしゃら、と夜空に流れていく。
空をたゆたう美しい光たちは、色とりどりの輝きを放っていった。




湖からたくさんの星が溢れる様子をボクはただただ、見ていた。




ひとつ、光の輝きが他とは違うことに気づき、目を凝らすと、その中あったのは、姉の眩い笑顔だった。
ボクは慌ててその光へ向かって走りだした。手が届きそうになった瞬間、その光はぱんっと弾けてボクを包みこんだ。あたたかな、優しい光だった。
ボクは、光とともに、空に向かってのぼりはじめた。







3/16/2026, 6:27:37 AM