【安心と不安】
僕の隣でにこにこと君が笑っている。ついこの前お節介で死にかけたっていうのに、相変わらず呑気な顔で。
握りしめた君の手の温もりに安心するのに、それと同じくらい不安になる。困っている人を見捨てられない君が、僕の知らないどこかで危ないことに首を突っ込んで、今度こそ死んでしまうんじゃないかと。ああ、もういっそのこと。
「閉じこめちゃおうかな……」
口の中で小さく転がした声は君には届かなかったらしい。
「え、何か言った?」
不思議そうに首を捻った君の頭をそっと撫でた。こんなことをいくら夢想したって、このアイデアを実現することは結局僕にはできないんだ。だって僕が恋した君は、あらゆる人を助けるためにあちらこちらを駆け回る、自由で力強い君なんだから。
「君が生きていて良かったよって言っただけ」
ただそれだけを口にすれば、君は僕の気持ちなんて何一つわかっていない無邪気な瞳で「ありがとう」と微笑んだ。
1/25/2024, 9:48:13 PM