たなか。

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【入道雲】

流れていた、入道雲が。その頃僕は寝転がりながら本を読んでいた。いいじゃないか、ここの芝は人工のやつで綺麗なんだから。
「また、そんなところで寝転んで。何読んでんの?」
「......綺麗だし。推理小説。」
本を閉じて声をかけてきた本人の目を見つめる。
「何。」
「何も。ただ、なんか、いつ死ぬんかなって。」
「唐突じゃん。縁起でもないこと言うなって言う前に何があったんだよ。」
一瞬だけ、考えた素振りを見せてから何も無かったようなケロッとした声色で答える。
「何も無いから。なんもないからだよ。」
そのまま見つめていたら少しだけ困ったような顔をした。苦笑いをしてから一言。
「早く殺してやればよかった?」
その言葉に反応して笑顔になった。ずっと待ってた。
「殺してくれればよかった。」

6/29/2023, 5:15:58 PM