せつか

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〝どんな事でも君と一緒に乗り越えていきたいんだ〟
それは確かに、彼女の背中を押してくれる言葉だったのだろう。
前を向き、共に歩いていけると思わせてくれる力強い言葉だと、あの時確かに彼女は思った。
結婚という最初の一歩を、彼女は男のその言葉で踏み出すことに決めた。

今、彼女は深く後悔している。
〝どんな事でも君と一緒に〟
借金、浮気、酒、そして病。
そんなものに巻き込まれるとは思ってもみなかった。
〝どんな事でも〟という言葉の中にそんなものが含まれるとは、あの時の彼女は予想だにしていなかった。
あの時男は、本当はこう言いたかったのだろう。
〝どんな事でもお前がいれば何とかなるだろ〟
男にとって彼女は、母であり、妻であり、ハウスキーパーであり、ATMだった。

一緒に暮らし始めて数十年。
ようやく彼女はそれに気付き、そして決断した。
不慣れなネットや金融の勉強をし、図書館に通い詰めた。少しずつ貯金をし、準備を整えた。

「ただいま」
「おかえりなさい」
そして――さよなら。


END


「君と一緒に」

1/6/2025, 2:51:50 PM