七風

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「眠りにつく前に、君がしたいことは何?」

彼女はそう、僕に問いかけた
「眠りにつく前...?それって、寝る前ってことですか?」
「...まあ、そういうことさ」
彼女は曖昧にそう答えた
「そうですね、ホットミルクを飲みたいですかね。最近寝付きが良くなくて、だからホットミルクを飲むようにしてるんです」
「そうか、体が温まると寝やすくなると言うからな」
「はい、それのおかげか、昨日はぐっすり眠れました」
「それはよかった」
彼女は少し間を置いて...ぽつ...ぽつと言葉を続けた

「今夜、眠る前に家族のことを思い出すといい」
「自分を取り巻く大切な人のこと、学校のことみんなのことを思い出して眠るといい」

「...なんでですか?」
「きっとその方が、良い眠りにつけるだろうからな」
「そうなんですか、じゃあ試してみますね」

彼女との会話はそこで途切れた
終わりを告げるチャイムが鳴り、僕と彼女は別れの挨拶を交わした


家に帰ってベッドに着くまで僕は妙に彼女の言葉が気になっていた
『大切な人を思い出す、自分の周りのこと、みんなのことそうすればいい眠りにつけるだろうから』か...
どういう意味なのだろうか

僕はパジャマに着替えホットミルクを入れた
彼女の言葉の意味を考えながら、ゆっくりゆっくりと体の中にホットミルクを注いでいく
体全体がホッと温まる感覚を楽しみながらベッドへと移動する
ベットに入り目を閉じる

彼女に言われた通り、自分を取り巻く周りの人、大切な人を思い出しながら
最近あったことみんなのこと楽しかったこと、悲しかったこと
不思議と、みんなの笑顔が鮮明にまぶたの裏に映し出されていく

...もちろん今日話した彼女のものも

そうこうしてるうちに僕は眠りについた





暗闇に一筋の光が現れる
その光は街の夜空には似つかわしくないとてもとても明るい光だった
光は今までにないほど強く輝いたと思うと
次の瞬間、けたたましい轟音と共に隕石が街に衝突した

その強い強い光は一瞬にして、街全体を包み込み、あたかもそこが元から更地であったかのように全てを消し去っていった





永遠の眠りにつく前にどんなことを思い出そう
もし今日眠りについたら全てが終わってしまうなら
どんなことを考えよう、何をしよう



...あなたならどうしますか?





お題:『眠りにつく前に』

11/2/2022, 11:33:57 AM