滑り込んできた電車に乗って、窓際に立つ。
文庫本を開き、蛇足的あとがきを読み流しながら、発車を待つ。
すぐに扉が閉まり、がたん、とひと揺れして、電車が動きだす。
電車に揺られながら、文字を目で追う。
僕が今読んでいる本は、正真正銘、つまらない本だった。
だからこそ、僕は普段読まないあとがきなんてとこに目を通していたのだった。
向かいの扉を、本ごしにちらりと覗く。
変わり映えのしない、見慣れた町がみるみる通り過ぎていく。
それにしても、どうして面白くない本ほど、あとがきも自己顕示欲が滲み出して癪に障るのか。
久々に、高尚でもなんでもない、ただくだらないだけの小説が読みたかったのに、そういう、ナンセンス的な本は選ぶのが難しい。
意を決して選んだこの本は、くだらないことを長ったらしく難しく、中途半端に高尚な結末に繋げようとしていて、くだらなさなど楽しめない、退屈な本だった。
電車に揺られながら、僕は退屈していた。
この本のつまらなさを予感できなかった自分の不甲斐なさに、悔しさを覚えた。
今日はなんだかいつもと違うような予感がしていたのだが。僕の予感はアテにならないようだ。
ただ、字の上に視線を滑らせながら、電車に揺られる。
電車は通過駅をとっくに通り越して、次の停車駅に差し掛かっていた。
電車が止まる。
向かいのドアが開く。
そのとき僕は思い知った。
僕の予感は、外れていなかったことを。
どうやら僕の第六感は鋭かったみたいだ。
10/21/2025, 10:41:52 PM