紗夢(シャム)

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【優しさ】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/29 PM 0:00

 昼休憩の時間になり、他校の生徒も
 合わせて、たくさんのバスケ部員が
 学食にやって来た。
 日曜日で学食自体は稼働していないので、
 それぞれ自分で持って来たお弁当などを
 テーブルに出している。
 ……ピクニックのように、重箱が何段も
 テーブル上に並べられているのは、
 当然アタシたちの前だけ。

「あらあら。相変わらず宵ちゃんは
 愛されてるわねぇ」
「あ、暦(こよみ)さん。こんにちは~」
「……お疲れ様です」
「こんにちは、暁ちゃん、真夜(よる)くん。
 宵ちゃんの応援に来てくれたのね」

 他校のバスケ部員からは奇異の視線を
 感じたものの、うちのマネージャーの
 暦先輩はもう慣れたものだった。
 どれだけ不可思議に見える行動も、
 真夜と暁がやっていれば、
 それはアタシのためだという方程式が
 出来あがっている。

「これ、良かったらバスケ部の皆さんで」

 お重の内の1段を真夜が先輩に差し出す。
 仕切った片方に唐揚げ、もう片方に
 いなり寿司を詰め込んである。

「あら、いいの?」
「真夜くんのチューリップ唐揚げと
 おいなりさんは絶品なので! ぜひぜひ」
「ふふふ、ありがとう。
 かわいい形の唐揚げも、おいなりさんも、
 本当にとても美味しそう」

 真夜はアタシと暁のことしか考慮しない
 から、1段は差し入れ用にしよう、と
 提案したのは暁に決まっている。
 それが優しさなのか、真夜の料理の
 美味しさを広めたいだけなのかは、
 かなり微妙なところだと思うけれど。

「じゃあ食べよっか」

 先輩が席を離れると、暁がそう言って
 3人で『いただきます』と手を合わせる。

「……作り過ぎじゃないの? この量は」

 いなり寿司の他にゆかりやおかかの
 お握りが入っている段、
 玉子やコンビーフのサンドイッチと
 サーモンのロールサンドが入っている段、
 チューリップ唐揚げをはじめ、
 色々なおかずの入ったお重が2段。
 3人で食べるにしても、多過ぎる。

「大丈夫だいじょーぶ。
 もうすぐ天明(てんめい)くんも
 合流してくれるから」
「は?」
「天明くんも今日部活で、
 でも午後は他の部が校庭使うから、
 午前で終わりなんだって。
 という訳で、お昼に誘ってみました」
「噂をすれば、ほら」

 真夜が学食の出入口を見て、
 合図を送るように手を挙げる。
 それに応えるように、槇(まき)くんも
 手を挙げるのが見えた。

1/28/2023, 8:27:53 AM