紗夢(シャム)

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【時計の針】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/10 PM 11:00

「――あ、『メモリー』だ。
 もう23時なんだね~」

 リビングの壁かけ時計から流れた
 ミュージカルCATSのメモリー。
 宵がスマホをスピーカーモードに
 していたので、暁にも聞こえたらしい。

「明日に備えて、そろそろ寝なくちゃ」
「……本当に出かけるの? 明日」
「もちろんだよ、宵ちゃん!
 バレンタインコーナー巡りしないと!」

 楽しそうに元気良く暁が答えると、
 宵は諦めたように
 「分かったわよ、行けばいいんでしょ」
 と呟いた。
 視線が時計の針に向けられているのは、
 暁が天明(てんめい)にバレンタインの話を
 してしまう前まで、時間が戻ればいいのに
 と思っているからかもしれない。

「じゃあ宵ちゃん、また明日ね。
 真夜(よる)くんもそこにいるかな?
 2人とも、おやすみ~」
「おやすみ」

 通話が切れる。
 『メモリー』も流れ終わっていた。

「……宵、ホットミルクでも淹れようか」
「……ありがとう。お願い」

2/6/2023, 4:06:14 PM