彩士

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僕の彼女は気配りができて、用意周到で、僕のことをなんでも分かってくれて、面倒見が良くて、でも甘えたがりな可愛い可愛いヒトだ。

僕の日課は風呂上がりの彼女の髪を丁寧に乾かして、長い髪を櫛でとくこと。

ご飯は日替わりで作って、お風呂を洗うのはじゃんけんで決める。

翌日の予定がお互いに無いときは、一晩中愛し合って、幸せに眠るのだ。

僕はそんな日常に満足していた。
僕も彼女も、この日常が続くことを願っていると思っていた。

『ごめんね、やっぱり飽きちゃった。今までありがとう』

僕が休日にしなければならなくなった仕事を片付けて、さあ帰ろうか、という頃に、ピロリンとLINEの着信音がした。

ロック画面に表示された彼女の名前とその文章が、不思議と僕の目にすんなりと入ってきた。

僕の心に焦りはない。
早く家に帰って確かめなければ、という気持ちも湧かない。

家に帰れば、笑顔で抱きついてくる彼女しか、僕は想像することができないのだ。

家にいざ帰ってみると、明かりはついておらず真っ暗だった。

ただいま、と呟くように溢した言葉を誰も拾ってくれやしない。

彼女の荷物がなくなっていることに愕然としながらも、僕は一人でご飯を作って黙々と食べた。

LINEの一番上に固定している彼女の枠は、相変わらず着信があることを伝える数字が表示されている。

長押しをして何度も確認して、何度もLINEを閉じた。

既読をつけないでいれば、彼女からの連絡はまだ続くのでは無いかと。

既読をつけないでいれば、彼女との繋がりは絶たれないのでは無いかと。

心のどこかで思っている。
ありえないことに気が付きながらも僕は、

僕はLINEをひらけない
僕はLINEを あ けない

9/1/2024, 11:07:24 AM