田中 うろこ

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叶わぬ夢だと知っても諦めきれない苦しみ。
好きになってしまったものは仕方がない。分かってる。そんなことは分かりきった話なのである。
「真田さんは猫飼ってはるんですね」
「おう。」
そんな自慢の男前の隣、それもお家にお邪魔している。そして白に黒ぶちの可愛らしい毛玉を愛しげに抱いている姿を拝むことができている。目尻なんかもう下がりに下がってしまっているし、こんな真田さん、昔の付き合いでキャバクラ行った時以来だ。
「ホンマはもう飼わんでええかなと思ってたんやけどさ、ほらやっぱ、また拾ってもうて」
「拾ってきはったんですか?」
「おん、軒下で血まみれになって落っこっとったこの子がほっとけなくて」
そうメダカちゃんを見る真田さんの目は、一瞬険しくなって、また慈しみに戻る。
「優しいすね」
「サナダは優しいにゃ〜。うん、せやろせやろ」
「メダカちゃんに言わさないでくださいよ」
両腕を上げてキメポーズをする(させられてる?)メダカちゃん、それでも嫌そうじゃないのも、真田さんの扱いが上手だからだろう。

「そういや真田さん、"また拾った"って言ってはりましたよね? 前も何匹か拾ってたんですか?」
「はっ、お前気づいてへんのかい」
「え、なんか飼ってましたっけ真田さん」
「お前を拾って会社入れて立派に育てたやん」
「…………(口があんぐり開いている)」
「いやあ、あん時のお前に付きっきりで色々教えて飼い慣らしたのホンマに大変やったし、ここまで立派になって俺も嬉しく思ってんで?」
「……………………(開いた口が塞がらない)」
「あんときのお前ほんまにブルドッグみたいやったで、ちっちゃくて。太くて。」
「……俺のこと人だと認識してます?」
「してる、してるよ、今は」

こういうところが魅力だし、魅力なんだけども。やっぱり叶わぬ夢ってものはあるらしい。









めちゃくちゃ頑張れば真田さんの隣にい続けるルートもあります。が、今のところだと永遠に忠犬のルートです。まずはメダカちゃんに勝つ所から始めましょうね、ブルドッグさん。

3/17/2025, 1:50:43 PM