椎名めばえ

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#.hpmiプラス 📚

「1000年先も」

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「ねえ」
――私たち1000年先も一緒に居られるのかな。

机に向かう男に声をかけるも、後に続く言葉は声にならず、口を閉ざした。
人間の平均寿命は84年と言われているが、現在は医療が発達しているため、健康であれば100年近くは生きるだろうと言われている。
それでも100年。1000年には到底及ばない。
こんなにも貴方のことが好きだと言うのに、寿命というものが邪魔して永遠に一緒、なんて言うことは有り得ない。それが酷く悲しく、私の頭をおかしくさせる唯一の悩みだった。

目の前の男は筆を置き此方を向けば、口を閉ざした私をじっと見つめ、口を開いた。

「何ですか?」
「ううん、なんでもない。」
「考えていたことを当てましょうか――1000年先も一緒に居られるのか、違いますか?」

ああ、見透かされてる。流石彼だ。私のことをよくわかってる。

「違わない。この先1000年、ううん、その先もずっと、例え死んでもその先にある天国だか地獄だか、はたまた来世でもこうして恋人であればいいのにって。それなのに寿命が邪魔をするの」

「小生は愛されてますね。勿論小生もそうありたいと思いますよ」

「だって幻太郎は私がずっとずっと片思いしてた相手だよ。どんなに手を伸ばしても届かなかったけど、やっと捕まえたんだもん。簡単には手放さないよ」

幻太郎――私がそう読んだ彼は小説家だ。そんな彼がFlingPosseというチームを組んでラップを始めた時はとても驚いた。
私はずっと彼の書く文章に惹かれ、新作が出ると必ず購入しに本屋まで足を運んだ。
それだけでなく、何度もサイン会に足を運び、チェキを撮り、何とかして連絡先を交換することに成功して今に至る。

「おや、その気持ちは小生も負けませんよ。貴女を見かけたその瞬間から、小生はいつも貴女のことばかり考えていたんですから」

そう言うと幻太郎は微笑んだ。

もしかしたら、もしかしたら幻太郎となら不可能を可能に出来るかもしれない。
例えそれがどんなに不可能だと笑われても、それを夢見ることくらいは許して欲しい。それくらい好きだから。

2/3/2023, 1:58:45 PM