瞼の裏に残る空が、
懐かしい感情とともに移ろう。
初めて獲物を狩ったときの眩しい空。
収穫を前にした秋晴れの空。
土地を争って怪我を負い見つめた空。
恋人を想って詠んだ茜色の空。
戦に敗れ途方に暮れて見上げた空。
貧困に喘いで救いを求めた空。
ただ戦争を生き抜くために仰ぎ見た空。
つまらない授業を抜け出して眺めた空。
膨らんだ腹部に手を当てて病室から見ていた空。
この空が呼び起こすのは、
僕の中に刻み込まれた先祖たちの物語。
連綿と続く僕らの命は、
今も昔も変わらないこの空を見上げてきた。
空の記憶がないまぜになった僕の心は穏やかだ。
じきに、また忙しくなる。
それでも構わない。
僕はきっと、その先を生きていくだろう。
微睡みに落ちていく。
5/5/2023, 5:17:23 AM