「地獄に堕ちろ。」
そう言う彼の瞳には、怒りと悲しみが滲んでいた。
「死にたい。」
学校の屋上から景色を眺めながら、今の感情を吐き出してみる。それを俺の親友は静かに聴いていた。いつだってそうだ。彼は俺の愚痴を聴くだけで、何も答えてはくれない。しかし、今日は違うみたいだ。
「死んでもいいよ。」
俺は心がすく思いがした。この会話が、俺と彼の最期の会話となった。
『ここは、あの世か?』
目が覚めると、何もないところに立っていた。俺の自殺は成功したようだ。
『これで自由だ。』
「それは良かったね。」
独り言のつもりが、言葉が返ってきた。声のした方を見ると、そこには鏡があった。そしてその中に、声の主、俺の親友が映っていた。どうしてここに?そういえば、彼の家は神社だったか。こういう力があるのかもしれない。
「君の今の気持ちは、最高ってところかな。でも、僕は最低な気持ちだよ。何故か分かる?」
『分かんないよ。』
「僕の親友が死んでしまったからだよ。僕のたったの一言のせいで。」
言葉に詰まる。そりゃそうだ、彼にとっては夢見の悪い話だ。
「ねぇ、僕初めて知ったよ。人間にとって一番不要なものって、勇気なんだね。」
『俺は勇気のお陰で、自由になれた。』
「そうだね。でも僕は、君の為の勇気のせいで、親友を失ったんだよ。」
彼も悩んでいたんだ。俺の為に背を押すべきか、生きていて欲しいと言うべきなのか。
『ごめん。自分勝手で。』
「許さないよ。だから、地獄に堕ちろ。」
そう言い、彼は鏡ごと消えた。
もし、地獄に堕ちたら彼とまた会えるだろうか。彼と会えるなら、まだ残された小さな勇気で、地獄に堕ちるのも悪くないと思った。
1/27/2025, 2:56:18 PM