まぶたの裏に張り付いている景色がある。
それは、幼い時分に起こった凄惨な事件だった。母親だった女と、父親だった男が、うつ伏せになって倒れていた。白いブラウスと白いワイシャツが、酸化した血液によって汚れてしまっていた。それを見下ろしている姉は、丸い頬を紅潮させて、うっとりと目を細めている。こちらを振り向いて、
「もう、大丈夫。怪獣はもう死んでしまったわ」
そっか、そうなんだ。姉が云うのなら間違いはないのだろう。私も目を細めた。舞い上がり、姉の側へと駆け寄った。手を伸ばした。
その手が、姉に届くことはなかった。その景色が、どうしても忘れられないのだ。いつまでも、ずっと、まぶたの裏に焼きついて、
5/9/2026, 3:11:39 PM