霜月 朔(創作)

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魔法



静寂の中、
ひとひらの雪が落ちる。
指先に触れ、すぐ消える。
まるで私たちの愛のように、
儚く、脆く、熱に消えるんだ。

「愛してる。」
それは呪いの言葉だったのか。
囁くたびに、君は遠ざかる。
私の声が届くたびに、
君は遠くへ離れていく。

かつて君は、
私を見詰めてた。
冬の湖のような静かな瞳で。
けれど、その光はもう、
私を映さない。
冷たい硝子の向こう側で、
君は私に背を向ける。

だから私は、
君の背中に魔法をかけた。
時よ戻れ、と。
切なる願いを込めて。
この手が触れた最後の瞬間を、
永遠に閉じ込めるために。

君は微笑んだまま、動かない。
嘗て私を愛した証として、
永遠を生きるんだ。
けれど、私は知っている。
それはただの幻だと。

魔法はいつか解ける。
君は私の腕の中で消え、
私は独り、取り残される。
この、醜くて残酷な、現し世に。


2/24/2025, 4:45:05 AM