黄色い洗濯機

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『セーター』

「ごめん!遅れた!」約束していた時計台で待っていると彼女の声がスッと耳に入る。彼女は少し前髪を気にしながら小走りでこちらへ向かってくる。僕がいつも集合時間の1時間前に来ているせいで彼女にいつも遅れていないのに遅れてしまったような態度を取らせてしまう。彼女には申し訳ないと思っているが僕はそれくらい少し前髪を気にする小走りの彼女が好きだった。僕らは出会ってから約一年、付き合ってから約半年だったためお互いがお互いの冬服を見たことが無かった。彼女は黄色いセーターを羽織り、袖口からは指が3本だけ見えていた。このままでは3本の指が寒いだろうと思い、僕は彼女の手をそっと掴んでポケットにしまった。時計台の長針が音を立てるより先に。

11/24/2023, 12:00:18 PM