作家志望の高校生

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息が詰まる。
頭の中がぐちゃぐちゃにかき乱されて、思考回路が焼き切れていく。思い出の断片だったものが、刃となって心のやわらかい部分に突き刺さっていく。お前と笑い合ったこの口で、お前の顔を曇らせた。お前と肩を組み合った腕で、お前の体に傷を残した。俺とお前がした、初めての大喧嘩。お前の発言がどうしようもなく俺の癪に障って、強い言葉で言い返した。お互い、頭に来ていたんだと思う。一度溢れた怒りは、堰を切ったように止まらなくなってしまった。言い争いと呼ぶこともできないような、汚い言葉同士での罵り合い。散々言い合って、顔も見たくなくなって飛び出るようにお前の家を飛び出した。
家に着いて、しばらくは腸が煮えくり返るような怒りが俺を支配していた。親にお前のことを聞かれただけで腹が立って、つい怒鳴ってしまうくらいには。でも、夜になって一人暗闇に身を浸してしまうと、とてつもない後悔が俺を襲った。もう二度とお前は俺の名前を呼んでくれないのではないかと、怖くなった。物心ついた時から、気付いたら横にいたお前。そんな奴が、急にふと見えなくなったような不安感が高まって、体の芯から勝手に冷えていく。謝りたい、とも思ったが、謝った程度で許してもらえるのだろうか。もう、どうしてあんな喧嘩をしたのかも覚えていない。そんな状態で謝ったって、到底許されるとは思えない。俺はどうしても眠れなくて、呻き声をあげながら布団に包まった。ああ、この頭の中を、絡まった思考を、全て言葉にできたらどれだけ楽だっただろうか。「ごめん」の一言にこの思考の全てを詰められる気はしなくて、喉に透明な塊が詰まったように息ができなかった。

テーマ:言葉にできないもの

8/13/2025, 12:28:31 PM