藍間

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 月明かりの下、一人散歩に出かける。近くのコンビニにただ向かうだけのささやかなお出かけなのに、この時ばかりは僕は自由だった。
 昼間のような人の目はないから、適当な格好でもかまわない。夜のあのコンビニに現れるのは疲れきった会社員や僕みたいな人間ばかりだ。だから気張らずにいられる。
 まるで明かりに吸い寄せられる羽虫のような僕らは、互いのことはできるだけ見ないようにして、コンビニ内をぶらつく。
 言葉はないけど、互いの存在は感じている。このくらいの距離が心地よい。こんな僕でもいていい場所というのは貴重だ。だから僕は特に目的があるわけでもないのに、このコンビニにやってくる。
 決まって買うのは小さなチョコ。店員と交わす言葉もほとんどないけれど、それで僕は満足する。この世界とのかすかな繋がりを得た僕は、そうして帰路につく。
 明日こそ昼間出かけよう。そんな気持ちになれるのは、この瞬間だけだった。
 少しずつ、少しずつエネルギーを貯める僕は、いつか羽ばたくために今日もまた夜の道を歩く。

5/17/2023, 11:00:35 AM