「ごめんね」と言えないまま、遠く離れてしまった君へ。
ひどいこと言ってごめん。
君のお姉さんが、俺の兄貴と仲良くしてるところを見て、兄貴を取られちゃうんじゃないかって思った。
兄貴は誰のものでもないのに。
でもね、あの片田舎の町で、ずっと二人で一緒にいたんだ。
友達の家も遠かったし、兄貴と遊ぶのが一番楽しかった。
東京みたいに遊ぶ場所もあんまりないから、夏休みなんか朝から家を出て、あてもなく町をうろついてただけだけど、いろんな話をしたよ。
兄貴はいつか、東京に行きたがってた。
君達が引っ越して来る前からね。
あの町でくすぶり続けるのに耐えられなかったんだろうな。
君達がその気持ちを強くしたことは間違いないと思う。
恨み言じゃなくて、そこから兄貴の夢が動き出したんだと思う。
だから、君のお姉さんに感謝してる。
俺が言うのはおこがましいけど、兄貴の未来を切り開いてくれた感じ。
俺には出来なかったことだからね。
まあ、うん、兄貴のことだから、ほっといても一人で行動してたのかもしれないけど、背中を押してくれたのはきっと君達の存在なんだと思ってるよ。
兄貴の話ばかりになっちゃった。
君に謝りたかったから手紙を書いたのに。
あの日、
「兄貴が離れていくのは、お前らのせいだ」
なんて、バカなことを叫んだっけ。
俺、泣いてたよね。カッコ悪い。
君が「ごめんね」って謝るから、心苦しくて、帰り道で野良犬相手に、俺も「ごめんね」って謝り続けた。
バカだよね。
えーと、とにかくごめんなさい。
本当は、この町で君が元気になって、ずっといてくれたら嬉しかった。
そしたら、ちゃんと会って謝れたと思う。たぶん、きっと。
でも、ホントにこの町を、好きになって欲しかったな。
俺も、大好きなんだ。この町も、君のことも…。
この手紙を、東京にいる兄貴に送って、君に渡してもらおうかと思って書いたけど、やっぱりやめとくよ。
いつか、やっぱりちゃんと会って謝りたい。
そして、この気持ちを伝えたい。
5/30/2024, 1:51:49 AM