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肌寒い空気に両手をすり合わせる。暖房の効いた学校から出たばかりの僕には十分に寒いが、今年はこれでも暖かい方らしい。毎年雪が降るこの地域だが、今年の雪は年を越してからになるだろうと聞いた。だからどうと言う訳でもないが。
大人になれば、昔は好きだったものに興味が無くなることは往々にしてある。僕にとっては雪もそのひとつだ。それを言えば、隣の彼女は眉を吊り上げて否定するのだろうけど。

「寒いねぇ」
「そうだね」
「でも息は白くならないなぁ」
「あれは空気が綺麗な時はならないからね」
「え、ほんと?」
「しらない」
聞きかじりの豆知識を披露して、いつもの道をちんたら歩いた。これだけ寒いと自転車を持ってこれば良かったかと考えてしまうが、隣の彼女は学校の通学手段に自転車を登録していないから、仕方ない。
「雪が降ったらさ、一緒に雪だるま作ろうよ」
「恥ずかしい」
「えっ、何が?私が?」
「うん」
「辛辣!」
もこもこの手袋で肩を殴られる。もこもこな上にコートを着ているので全く痛みは無い。が、大袈裟に吹き飛ばされておいた。
「じゃあかまくら作ろう!それか雪合戦!」
「…………」
「今それも恥ずかしいって思ったでしょ」
「言わなかったんだから見逃してよ」

もう、と怒ったポーズをとる彼女をいなして家路を急がせる。こんなことを言っていても、どうせこの幼馴染は約束だなんだと僕を引っ張り出すのだろうけど。僕もそれがわかっているから、安心して軽口を叩けるのだ。
ぶすくれる彼女を横目で確認して、少し緩んだ口元をマフラーで隠した。彼女が鈍くてよかった。
雪の降る日、誰よりも早く僕を誘い出す彼女を期待して、今年も僕は雪を待つ。


『雪を待つ』

12/16/2023, 8:48:03 AM