職場の先輩が風邪で休んだ。
微熱だったし、コロナもインフも両方陰性だし、今は美味い弁当食って漢方飲んで休んでいると、グループチャットのメッセで聞いた。
何か必要な物が有ったら仕事の帰りに買って届けると、ちょっと気を遣ったら、
物は自宅療養用の備蓄で全部足りてるから、会って話をしたくなった時だけ来れば良い、とのことだった。
先輩が風邪で休んだ。
だから、今日の仕事は独りだし、
新人いびり大好き上司のオツボネ様、尾壺根係長が、何故かパッタリいびるのをやめて、部下や新人にお菓子配ってゴマすり始めたのを見るのも独り。
「ヤバいよ。オツボネ何があったの」って、こっそりグルチャするのも、独り。
昼休憩は久しぶりに、先輩じゃなく別の人、別部署でこの限りなくブラックに近いグレーにしがみついてる数少ない同期と、一緒に外でランチを食べた。
「同期、私とあんたと、もうひとり残ってたじゃん」
ランチトークの口火を切ったのは同期だった。
「そのもうひとり、とうとう来月で辞めるって。もう自腹切れる場所無いから無理ってさ」
今朝DMで速報貰ったの。同期はそう続けて、スマホの画面を見せてくれた。
「ウチはオツボネのせいで新人ちゃんがズッタズタ」
サンドイッチを食べながら、私も近況報告。
「すごいよ。指導じゃなくてほぼ処刑だもん」
あれじゃ来年以降無理だろうね。言おうとしたらパンから具材が出そうになって、慌ててはみ出たレタスとチキンを先に噛んだ。
新人ちゃんや、同期が辞めてって、世渡り上手でいびり好きなオツボネ様が生き残る。
「なんか、バカみたいだよね」
ポツリ呟く私に、同期もうんうん頷いて、
「ホントにね」
長い、大きなため息を吐いて、
「何のために仕事してるんだったっけって」
ねー。と、私に視線を放ってきた。
「オツボネ、やってるの足引っぱりとイジメだよ」
「こっちの課長もヤバい。何って言うんだっけ、ノールック決裁だかノーチェックサインしかしない」
「そういうヤツがさ。私達の倍も給料高いんだよ」
「ヤバいよね。バカみたいだよね」
「ねー……」
私達、絶対あいつらよりリッチになってやろうね。
最後に残った同期ふたりぼっちで、笑って、食べて、職場に戻って。それで、その日の昼休憩は終わった。
3/22/2023, 11:17:01 AM