たった一つの希望(オリジナル)
75歳年金暮らしの独居老人である。
明日は年金日だ。
お金が入るまであと3食。
財布の中には120円しかない。
冷蔵庫は空っぽ。
預金残高30円。
今月は出費が嵩んだ。トイレが壊れて修理したし、水道代も高めだった。支払いをきちんとしたら、切り詰めて生活しても、こんな事になってしまった。
別居の子供たちには頼れない。
私はプライドだけは高く、人に頼ったり、金を借りたり、試食巡りをしてお腹を満たすなどの行為が恥ずかしくてできなかった。
(今日は何も食べないで過ごすか…)
一日くらい何も食べなくても死にはしない。
一瞬そう思ったのであるが、頭に閃くものがあった。
昨今、米が値上がりして120円ではおにぎりも買えないが、コロッケなら。
近くのスーパーで売っているのを知っている。確か100円くらいで買えたはず。あれならお腹にたまるし、結構好物だ。
そう考えると、もうコロッケの口になった。
他には何もいらない。
とにかくお腹がすいた。
弱った足を何とか奮い立たせ、15分かけて600メートル先のスーパーまで歩いていった。
ウキウキと惣菜コーナーに向かうと、目当てのコロッケが、ひとつだけ残っていた。
(良かった!)
喜びに笑みを浮かべ、棚まであと数メートルというところで、若者が私を追い抜き、コロッケを奪い去っていった。
(ああ…!)
空になったコロッケの棚の前までようやくたどり着き、私は途方にくれた。
なんだか色々と込み上げてきてしまい、目からほろほろと涙が落ちた。
3/2/2026, 12:55:33 PM