新聞の出生欄を読むのが好きだった。
きらきらして、ふわふわして、鮮やかに眩しい、
様々な祈りの形を見るのが好きだった。
隣のお悔やみ欄だって嫌いではなかった。
最期まで護り、存在証明をし続けただろう、
様々な時間の形が好きだった。
ずっと昔に載っただろう紙面は残ってない
ずっと先に載るだろう紙面は見られない
願わくば、此処に再び私の名が載る前に
私の知る誰もの名が載らないことを
不孝かもしれないが、願っている
‹私の名前›
目が合った、と思った。
思った時には既に目は逸らされていた。
まあ知らない人だし、それは向こうもそうだろう。
目が合った、と思った。
瞬く様な間だけ、真っ直ぐに視線が絡んだ。
やけに驚いたようだったけれど、何だったろうか。
目が合った、と思った。
道を逸れて、柵を跨いで、それでも目が合っていた。
同じくらいかな、と遠目に思ったその人は、
近くで見れば思った以上に年上の人だった。
目が合った、合っている。
そうして分かった、分かってしまった。
開かれる口が音を紡ぐ前に、人差し指を立てた。
呼んではいけないと首を振った。
視線が落ちる、跡を追う。
靴の要らない両足を。
‹視線の先には›
7/21/2024, 8:25:50 AM