名無しの夜

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 思い出してはいけない。

 深く深く、心の奥底に沈めて。

 蓋をして、鍵を掛けて。

 戻ってはいけない。


 悔いるほどに、落ちてしまうから。


 ありえない未来を幾重幾百と描いて

 すべてが
 昏い思考の渦に飲まれてしまうから。


『後悔することのないように』

いうだけなら、容易い。

どれだけそう思って動いても

真に何も思わず——となるのは
極めて難しい。


今、自分にあるすべてを

選べる手段の中で、できることを

あるいは、静観を。


『あの時に、できることはやりきった』
『選べる手段の中で、最善と思うことを選んだ』


そう、思えるのが最上。


たとえ、もっと何かがあったと気付いても
それはもう、未来にいかすしかない。


悔いても、戻れないから。

どうにもならないことが、あるから。


深みにとらわれる前に。

進まなくては、ならない。


全部を抱えて進む先に、きっと


よりよい未来があることを、信じて。

5/16/2024, 3:57:47 AM