椋 muku

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久しぶりに外に出て朝の空気を吸いながら散歩した。お決まりの散歩コースには神社があり、紅葉は全て地へ降りていた。残ったのは見事なイチョウだけ。枝に金色の葉をいくつも纏って輝き続けている。紅葉の絨毯を踏みしめた時、雨の重さに耐えきれなかった葉が私に降り掛かってきた。
落ちていく…

私と君の仲が深まってからというもの漫画ではないがやはり厄介な人物というのは存在するものだった。
君との仲が良くても想い人を軽々しく聞けるような間柄とはまた違った関係だった。私の前の席の子は多分君にとって厄介な人物だろう。悪い子ではないんだけど、私が後ろにいるから休まず常に話しかけてくる。君はその子と私が話すのが嫌みたい。
私はというと、君がゲームの話で意気投合してるあの子が厄介だと思ってる。私はゲームを持っていないし、君が楽しいなら沢山話しても別に問題は無い。問題なのはあの子の性格だ。あの子は狙ってるのか無意識なのか、君との距離が以上に近いから。私だって妬くに決まってる。君の学生服の外れたボタンを締めてあげてたところも実は見てたんだよ。目の前だったから視線を逸らした方が怪しいかなって思ったから。君は私と話す時とはまた違った笑顔を見せてる、あの子にだけ。私、ゲームの話、できないもんね。私だけすごくつらくなってる。

君は最近私よりあの子と仲が良くなった。心なしか距離も縮まった気がする。私だけ置いてけぼりなこの感じ。嫌だな。私も君のことを見ると心苦しくて関わることを控えた。学校生活に私情は挟めないから。私が予想外の行動に出たからだろうか。君は私が離れていくととても焦った。まるで私に勘違いしてるとでも言いたげな表情。そんなこと信用できるわけが…
「ありました」。完全に私の負けでした。私の前に現れた君は私の傷ついた顔を覗き込んだ。それからごめんと言わんばかりの甘々対応。

「アイツとはただゲームの話してるだけだから。別に特に仲良い訳じゃないから」

信じます。全然信じるよ。それから君は気づいたら私の側にいるようになった。心配そうに見つめるその瞳。私は君に見つめられるだけでもっともっと落ちていく。君のスキンシップが少しずつ増えてきたのも気のせい?君も私に落ちて来たんじゃない?

私たちはもっと深くまで落ちていく。きっと互いを知る度にもっと欲しくなって、そのうち互いじゃなきゃダメになって。気づいた時にはきっともう「堕ちてる」。
色彩豊かな紅葉が枯葉となって散っていくこの季節とは裏腹に私達はもっと親密で熱を帯びた関係の沼へ沈んでいく。奥深くまでオチテいく。

題材「落ちていく」

11/23/2024, 1:41:24 PM