カランコロン、お店の扉が開く。こんな時間にお客さんなんて珍しい。
「どなた?」
入口へ視線をやれば、青空を写したような服の青年が立っていた。
「こんばんは、郵便屋です」
「あら、郵便屋さん。遅くまでご苦労様」
採寸用のメジャーをポケットにしまって、郵便屋さんに駆け寄る。
郵便屋さんは天使様のように微笑んだ。その手に、海色の手紙。わたしがよく知る、海の色。
「ご友人から、お手紙を預かってます」
「まあ」
いつもはわたしが地上に降りて、友人の手紙を回収する。でも、いつでも地上に行けるわけではないから、どうしても手紙を読んでお返事を書くまでに時間がかかってしまう。
早くお返事を届けたいのにできない。それがもどかしいと思っていたのに。
「こんなに嬉しいことがあっていいのかしら」
わたしは手紙を受け取って、さっそく目を通した。
ああ、ああ。こんなにすぐ手紙を読む方法があったなんて。早くお返事を書かなければ。
「ねえ、郵便屋さん。まだお時間よろしいかしら」
「ええ、まだ勤務時間内なので」
「ちょっと待っててくださる? すぐにお返事を書くわ」
お店の奥からペンと便箋を持ってくる。
郵便屋さんが傍に立つ気配を感じながら、わたしはお返事を書き上げた。
「郵便屋さん、これをあの子に届けてちょうだい」
「はい、承りました」
郵便屋さんは、帽子を胸元に持ってきて一礼すると、白い羽根を広げてお店から飛び立った。
「これからあの子にすぐ届けたい時は、郵便屋さんにお願いしようかしら」
ひらひらと落ちてきた羽根を拾う。
夜だというのに、わたしには真っ白に光り輝いて見えた。
1/30/2024, 1:57:30 PM