霧つゆ

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 「ばかー!」

 そう言って、彼からもらったネックレスを海へ投げた。彼は昨日、私を裏切った。女の人と腕を組んで歩いていた。そのことを問い詰めると彼は白状した。なんと私のほうが浮気相手だったらしい。私は彼に別れを告げ、独り身へと戻った。
 家に帰り、ベッドに倒れ込むように横になると、チャリっという音がした。彼からもらったネックレスの音だった。彼とお揃いのネックレス。彼はよくアクセサリーを付けた。ネックレス、指輪、ピアス、服の装飾。すべてが好きで、全てが憎たらしい。

 「好きだったな…。」

 しかし、いつまでも未練たらしく思っているわけにはいかないので、彼と初めて行った海へ行き、区切りを付けようと思い、今に至る。
 波にさらわれたネックレスは海の反射と同じ様に海を光らせ、まるでこれ本来の役目だったかのように消えた。

 気が済むまで海を眺め、そろそろ帰ろうと歩き始めた。その時、別の人がけがあることに気がついた。元カレと元彼の本カノだった。彼らは私の存在にも気が付かず、まるで世界に2人しか生きていないかのように、イチャイチャとしていた。

 「愛してるー!」

 そう、彼は海に向かって愛を叫んだ。私も、初デートで彼に海へ叫ばれ「やめてよぉw」なんて、したものだ。
 そうだ、アレも捨てなきゃ。
 私は、全力で走りにくい砂浜を全力で走り、彼を海へ突き飛ばした。

 「ばーーか!!!浮気者ー!!!」

 うちに突き飛ばされた彼は、キラキラと海の反射と同じ役割をしていて、すごく綺麗だった。

No16 _愛を叫ぶ_

5/12/2024, 9:39:27 AM