はっさく

Open App

私は人に言っていない少し変わった能力がある。

もちろん、世界を救うことができる英雄になったりモテモテになったりするような夢のある力じゃない。

その能力は人の『涙の跡』を見るという些細な力だ。

その能力について3点ほど解説したいと思う。

①『涙の跡』はふつうの涙の跡と同じように、瞳から頬をつたうように頬に薄く浮かび上がっている。

②『涙の跡』は色と濃さによって感情と感情の度合いが分かる。

薄桃色は、嬉し涙。水色は、悲しみからきた涙。
たまに、これ以外の色も見るが、私にはさっぱり検討がつかない。さらに、色が濃いほど、その感情が強い。

③『涙の跡』は最後に流した涙を反映しているらしい。

なぜこんなことを長々と書くのか、それはー。

夏休みに入って、私は長らく会っていない親友と
会うことになった。

会ったのは今日の午前中。

私たちの最寄り駅のスターバックスで待ち合わせだった。暑さで人々が外出を諦めたのか店内はいつもより空いていた。店内に入ると彼女の姿はまだ見当たらず、
カフェオレを頼んで、窓際の二人席でスマホをいじっていた。

待ち合わせ時間ちょうど、
「ごめん!待った?」という懐かしい声が聞こえて、
スマホから目を上げると、私の待ち人がいた。

私は、あやうく静かな店内で大声を出してしまうところだった。
声は堪えたが、私の喉はひゅっと音を立てた。

「大丈夫?どしたん?」
彼女は私の驚いた顔に心配しているようだった。そっくりそのまま私はそのセリフを返したかった。

なぜなら、彼女の頬には今までの人生で見たことがないくらい濃い青色の『涙の跡』があったからだ。

さらに、私は彼女の頬に『涙の跡』を見たのも小中高と過ごしてきて、今日が初めてだ。

彼女はいつも、底抜けに明るかった。
根暗な私とは違って。

「マジでどしたの?」
ちょっとはにかみながら彼女は言った。

「…」
何も言葉が出てこない私が嫌になる。

昔、高校に行く途中、駅で人身事故があった。私は飛び込む寸前の彼を見た。彼の『涙の跡』は今の彼女より少し薄い青だった。

「なんか、考え事?」
「あぁ、ちょっと。」
「イラストレーターさんは大変ですな。」

彼女は、新作のフラペチーノとチョコスコーンをトレイに乗せて、どすんと私の前に座った。

彼女は、記憶のままで底抜けに明るかった。

彼女は、死んでしまいたいくらい悲しいはずなのに


なんでこんなに明るいんだ。


多少、感情が分かるくらいじゃ、どうにもならない。


なぁ、私はどうしたらいいんだ?


                    『涙の跡』

7/26/2025, 3:15:11 PM