メイ

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放課後の教室が好きだ。
いつもはザワザワ騒がしいこの場所が
今はシンと静まり返っている。
遠くから運動部の人たちの声が
微かに聞こえてくるくらい。

傾きかけた陽の光がキラキラ輝いている。
わずかに開けた窓から吹き込む風が
薄いカーテンをヒラヒラと揺らしている。

この窓際の席は夕焼けのグラデーションを
独り占めできる特等席。

誰にも邪魔されないこの時間と空間が好きだ。
図書館で借りた本を読んだり
宿題や自習をしたり
今みたいにただ空を眺めていることも多い。

ふと、足音がこちらに近付いていることに気付く。
こんな時間に校舎の端のこの教室までくるのは珍しい。

足音が止まり教室の扉が開かれる。
現れたのは、たまに話すクラスメイトだった。
特別に仲が良いわけではないが
いつもニコニコしていて話しやすい子だ。

「どうしたの?忘れ物?」

目が合ったので、問いかける。
相手は、下校時刻の過ぎた誰もいない教室に私がいても驚いた様子はなく
ふんわり笑ってこう言った。

「あなたがいたから」

6/20/2023, 12:11:47 PM